奥村恵子 / ビバ★ラ★ムジカ



付録DVD付き
・シェケレ用のひょうたん探しでも訪れた西アフリカはブルキナ・ファソのとある村を訪ねて

・アフリカンパーカッションアンサンブルグループ“バナキン”の日本公演の様子

・SAPEをキメたアフロパリジャンと、パリでのライブの様子
 

当店でもラテンパーカッションクラスを開講している女性パーカッショニスト、奥村恵子さんは、生粋の日本人でありながら、つい数年前まで日本よりも海外を拠点に音楽活動をされていた方です。

奥村さんが海外に飛び出した理由は、音楽的な英才教育を受けながら育ったからというわけでもなく、パーカッショニストとして更なる向上のためにというわけでもなく、ただ幼い頃から大好きだったという“太鼓と踊り”に共鳴した事から始まったようです。

表紙のイラストを始め、本の中でもたくさん登場する様々なクレヨン画イラストも、奥村さん自身が旅先で描いた非常に独特の魅力あるものばかりです。

もしも、この本に描かれている奥村さんのような旅をしようと思ったら、恐らく大半の人が身の危険を感じて旅を断念せざるを得ない状況に陥るのではないかと思いますが、本当に心配になるぐらい行き当たりばったりで、どの国に行っても完全に現地の住民と化すスタイルの奥村さん独特の旅の仕方には、実はある一定の法則があります。

それは、“頭ではなく心で考えてその直感に素直に行動する事”

本書は、きっとあなたを初めてドラムを叩いた時のような感覚、あの体の奥まで深く響き渡るワクワクするような感覚を思い起こさせてくれること間違いなしのとっても愉快な一冊です。

特に私達ドラマー(パーカッショニスト)には共感できる部分も多いと思います。

 

 放浪の旅の始まり

何のあてもつてもなく太鼓の音に誘われるままに日本を飛び出した奥村さんは、持ち前の超大胆な行動力と強靭な生命力で、その後次第に、より太鼓のリズムの濃い方へと引き寄せられ、ニューヨークをはじめ、アメリカ国内やメキシコを経てカリブ海の名も無き島にたどり着き、盗難にあって無一文になってもめげずに、、。。というか現地の人になりすまして、その後もリオデジャネイロなどブラジル方面、さらにプエルトリコ、キューバと言ったカリブ海諸国をたくましく放浪し、まずは太鼓の事はそっちのけのダンスに酔いしれる日々を送ります。

“太鼓をやるならコンガを!!”と決意すると、今度はニューヨークに戻って師となるような人を自分の目と耳で探し回り、この人だと決めるとコンサート終了後の楽屋まで行って直談判。“君はコンガをやったことはあるか?”という問いに“やった事はないがコンガが大好きだ!!”という流れで見事に?交渉も成立し、今度はひたすらコンガと向き合う日々を送ります。
コンガレッスンを受け始めてしばらくすると、先生にある不思議な約束事を言い渡されますが、もちろん型破りな奥村さんはバレやしないと高をくくって約束を破ります。が、この不思議な先生はその後のレッスンでなぜか簡単に約束を破った事を見抜いてしまいます。そうして、あっさりと破門を言い渡されると、今度は粘りの一点張りでなんとか生徒として復帰します。が、またもや同じく約束を破ってしまったりと、ここでもたくましい行動力がものを言います。。

これでめでたしめでたしかと思いきや、その後日本に戻って、とあるバンドで活動していると、またもや放浪の虫が騒ぎ出し、今度はアフリカ行きを決意します。経由地のバンコクまで飛びますが、初めて経験するアジアの美しさに酔いしれる内にビザの期限が切れてしまい、結局目的のアフリカには行けずに、一度日本に戻ります。。。“なんちゅー行き当たりばったりな・・・”

しかし、ここからが本当の旅の始まり。戻った日本でたまたま見た、旧ザイールの超人気バンド、“パパ・ウェンバ&ビバ・ラ・ムジカ”のサウンドに強く心を打たれると、これまた何となく持っていた「シェケレ」を携えて人生初のライブ飛び入りを敢行。そしてこれを運命の出会いとし、“絶対このバンドのメンバーになってやるぞ!!”という強引な決意を固めます。

 そして長い旅へ

ここから、奥村さんの長い旅は第2幕を迎えますが、パリを本拠地としているこのバンドの懐に飛び込む前に、“まずはアフリカで自分の手にしっかり馴染む新しいシェケレ用のひょうたんを探さなくっちゃ!!”というちょっとビックリな“冒険家のノリ?”で、東京で知り合った西アフリカはブルキナ・ファソのとあるバンドのメンバーの家に転がり込み、苦労してやっと自分のシェケレを完成させていよいよパリへ向かいます。
そしてパリで運命のバンドとの再会を果たすと、このバンドのツアーに付いて回り、ゲストメンバーとして最初のアメリカツアーを終えると、いよいよ今度は本格的にこのバンドのメンバーとしてパリでの生活を始めます。

メンバーの総勢20数人、不法滞在も当たり前?しかも、強制送還されたはずの人物が数ヵ月後には何食わぬ顔で戻ってきたり・・・というハチャメチャなアフリカ人の男ばかりの大所帯バンドに飛び込んだ奥村さんは、徐々にバンドに溶け込み、メンバーとの共同生活を続けながら、真夜中から朝方まで続く連日のバンドリハやヨーロッパ諸国のツアーで腕を磨いていきます。
演奏以外でのパリの日常生活についてもたくさんの痛快なエピソードが綴られていますが、そのほとんど全てが日本の常識では全く考えられないような状況。十分なほど放浪慣れしている奥村さんは、困った時でも“ノリ”の良いほうに自然に足が向くのか、その後完全にパリのアフリカ社会に溶け込んでいきます。

ほぼ完全にアフリカ人と化した奥村さんは、その後もこの運命のバンドで、世界中のツアーを回り、ついには母国?アフリカツアーにも同行。このアフリカツアーでもたくさんの過酷な状況を乗り越え、たくさんの思い出を携えて無事にパリに戻ったと思いきや、今度は熱帯の伝染病「マラリヤ」に犯され、ついには“生と死の狭間”にまで足を伸ばし放浪。。。
この本では、その病気の回復後、より一層パワフルに活動を再開し、かねてからメインのバンドと並行して活動していた太鼓とダンスのアンサンブル集団“エリマ”(もちろんアフリカンバンド)での精力的な演奏を経て、2002年頃に長い旅に一度区切りをつけて日本に戻るまでが描かれています。